桜の季節、優美な富士山求めて

4月の第1週、1泊2日の日程で山梨県へ研修旅行に行ってきました。3年ぶりとなる研修旅行ですが、今回のテーマは何と言っても「富士山」。平成25年6月に世界文化遺産として登録され、大体的なニュースになったことは、記憶に新しいのではないでしょうか。

折しもこの時期は桜が見頃とあって、富士山を背景にしながら見る桜に俄然気持ちは高まります。しかし、この日の天気予報は、曇り時々雨。降水確率は60%とかなり高め。雨が降って富士山が見えず、桜も散ってしまうのではないかと、気が気ではありません。

この旅行が思い出深いものになるかどうかは、天気に大きくかかっています。しかし、不安は現実のものに…。富士山に近づくにつれ、雨が降りはじめたばかりでなく濃い霧まで立ち込め、とうとう新幹線からは見ることはできませんでした。

小田原駅の近くには、難攻不落と言われた小田原城がある

新大阪からのぞみで約2時間半、箱根観光の拠点「小田原駅」に到着。駅の近くには桜が名所の小田原城がある

 

富士山の雪解け水が湧き出る、神秘的な8つの湧水池「忍野八海」

しかしチャンスはこれから!と、気を取り直して最初に向かったのは忍野八海。富士山の伏流水を水源とする湧水池が点在する観光スポットで、「おしのはっかい」と読みます。この日はアジア圏内から多くの観光客が訪れ、賑わっていました。日本人に限らず富士山は海外の方にとって、人気の観光地のようです。

富士信仰の古跡霊場や富士道者の禊ぎの場の歴史や伝説、 富士山域を背景とした風致の優れた水景を持つことから、世界遺産富士山の構成資産の一部として認定されている「忍野八海」

富士信仰の古跡霊場や富士道者の禊ぎの場の歴史や伝説、 富士山域を背景とした風致の優れた水景を持ち、世界遺産富士山の構成資産の一部として認定されている「忍野八海」

 

忍野八海を代表する「湧池」。湧水量2.2㎥/秒と、八海一の湧水量

忍野八海を代表する「湧池」。湧水量2.2㎥/秒と、八海一の湧水量

 

池は多くの虹鱒や岩魚などの魚が泳ぐ

コバルトブルーに光り輝く様が神秘的で見る人を引き込む。池には多くの虹鱒や岩魚などの魚が泳ぐ

忍野八海がある忍野村は山梨県の南東部、富士北麓にあって、周囲を山に囲まれた高原盆地です。涼しい気候を活かして夏は、なすやきゅうり、トマトなどの高原野菜がつくられていて、中でもとうもろこしは、甘味が強く味が良いことから人気があるそう。

村の家の軒先にはたくさんの数の、とうもろこしが吊り下げられていました。よく見てみると、普段私たちが口にしているとうもろこしと何だか少し様子が違います。色が濃く、粒に光沢があり、触ると硬い。これは「甲州とうもろこし」と言って、戦前から雑穀として栽培されている伝統野菜なのだそう。私たちになじみ深い甘くて柔らかいスイートコーン(甘味種)に比べ、甲州とうもろこしは、フリントコーン(硬粒種)という種類で、硬いデンプンが粒の全体についているのが大きな特徴です。メキシコ料理のタコス「トルティーヤ」に使われていると言ったほうが、ピンとくるでしょうか。忍野村では、粉にしておやきなどの郷土料理に使われるそうです。

夏に収穫した甲州とうもろこしは、軒先に吊るして干し乾燥させる。昔はよく見られた光景だそう

 

富士山の雪解け水が地下の溶岩の間で、数十年の歳月をかけてろ過され、湧水となった忍野八海は、8つの湧水池で構成されています。飲用できるほどきれいな湧水は、「全国名水百選」にも選ばれていて、その水を利用したコーヒーや豆腐などのグルメが楽しめます。コーヒーは雑味がなく、さっぱりした後口で美味。やはり水が美味しいと、素材が持つ良さを際立たせてくれるような気がします。

水はミネラルが多く含まれる硬水。清涼な味わいで甘味も感じられ美味しい

水はミネラルが多く含まれる硬水。清涼な味わいで甘味も感じられ美味しい

 

ミネラルが豊富な富士山の伏流水と、厳選された国産大豆、天然にがりを使っている「忍野八回豆腐」。青唐辛子味噌を薬味にいただく。しっかりとした大豆本来の味が楽しめる

ミネラルが豊富な富士山の伏流水と、厳選された国産大豆、天然にがりを使っている「忍野八海豆腐」。 青唐辛子味噌を薬味にいただく。しっかりとした大豆本来の味が楽しめる

 

湧水を利用してつくった「名水餅」。よもぎが練り込まれ、焼き立てアツアツを味わえる

湧水を利用してつくった「名水餅」。よもぎが練り込まれ、焼き立てアツアツを味わえる

 

池で泳いでいた岩魚を使った骨酒。香ばしい風味で旨味が凝縮されている

池で泳いでいた岩魚を使った骨酒。香ばしい風味で岩名のうま味が凝縮されており、お酒と言うよりも出汁のよう

 

さて、忍野八海を充分に散策した後、ぼんやりしていると急に陽が差しはじめ、それまで厚い雲に覆われていた富士山の山肌が徐々に見えてくるではありませんか!絶好のチャンスとばかりに、すかさずシャッターを切ります。残念ながら頂上付近までは見えませんでしたが、山腹にまだ雪が残った富士山を見ることができました。

厚い雲の合間から富士山を奇跡的に見ることができた

逆さ富士を見ることのできる「鏡池」から奇跡的に、富士山をうっすらだが見ることができた(写真では分かりづらいが、肉眼だともっとよく見えた)

 

四季折々の日本庭園が自慢の富士山が見える温泉旅館「鐘山苑」

忍野八海を後に向ったのは、15分ほどの距離にある温泉旅館「鐘山苑」。四季折々の日本庭園が自慢の宿で、部屋やお風呂からは富士山を見ることができます。

富士山が見える温泉旅館「鐘山苑」。新幹線三島駅より専用シャトルバス有り

富士山が見える温泉旅館「鐘山苑」。格調高い和風旅館で、露店風呂付きの客室もある

 

2万5千坪もある庭園。春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪景色を楽しめる

2万5千坪もある庭園。春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪景色を楽しめる

 

庭の桜。イベント中は、ライトアップされ幻想的な桜が楽しめる

庭の桜。イベント中はライトアップされ幻想的な桜が鑑賞できる

 

夕食までまだ時間があったため、お風呂に行くことに。お風呂は高アルカリ泉の天然温泉で、効能としては高血圧や動脈硬化症、冷え性や疲労回復、健康増進など嬉しい効果があります。

屋上にある露天風呂は、富士山が一望できるというのが売り。「温泉に浸かりながら富士山が見ることができるなんて、なんて贅沢」と、大きな期待を胸に急いで行ってみました。すると目の前には先ほどより大きく、全体をほぼ表した富士山が見えるではないですか!初めて真近に見るその大きさに圧倒される感じはなく、むしろゆったりとした姿に、やさしさのようなものを感じました。

何にせよこの悪天候の中、2回も富士山を拝めることができたのは幸運でした。山の神様の機嫌が良かったのでしょうか。

お風呂を楽しんだ後は、美味しい会席料理で親睦をはかり、その後の自由時間では湯冷めした体を温めに温泉に浸かったり、地元のおいしいお酒「甲州ワイン」を楽しんだり、ゲームに興じたり。それぞれが思い思いの夜を過ごし1日目は終わりました。

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旬の素材を使った前菜。彩り豊かで春を感じさせる

 

2日目に続きます