この1ヶ月の間に3カ国を訪れ、ハードな撮影をこなしました。

現在、当社では世界各国に支社や工場・クライアントを持つ企業のPR映画を製作しています。この中に挿入するカットを撮影するため、アメリカ、マレーシア、中国へと立て続けに行くことになりました。

アメリカ・アトランタ  2月16日~20日

アメリカ・アトランタの工場ではビークルの生産ラインを撮影。ビークルというのは敷地内で荷物を運んだり、野山で狩猟を楽しんだりする実用車、一般にユーティリティーカーと呼ばれるものです。アメリカではこのビークルを自宅の庭で乗り回すのがひとつのステータス、といった考え方があるようです。(溜息)

アメリカでの撮影は、なんと20数年ぶり。当時は撮影機材が大きくて嵩張り、手荷物や税関など大変な苦労がありましたが、今は機材もコンパクで高性能になっているので、移動も大変楽になりました。

アトランタまでの飛行時間は12時間。長時間のフライトですが私はノープロブレム。なにしろ無類の映画好きと来ていますから、日本未公開の映画も含めて、しっかり4本ほど観賞させていただきました。

アトランタに到着したのは、夕方。天気は、雨。そのまま撮影現場近くの郊外まで、車でさらに2時間の移動。

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枝にできた氷柱

撮影初日、雨は止みましたが、異常気象のせいとかで気温はなんと-11度。アトランタは、暖かいイメージがあったのですが、この激寒はまったくの想定外。木々の枝に雨がつき、それが凍って、葉のない枝が一面白い花を咲かせ、町並みはまさに樹氷の世界になっていました。

 

 

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木に白い花が咲く

昼食は工場の外のレストランに向かったのですが、ここでも一波乱。なんと樹氷の枝が折れ、電線を直撃して町が停電してしまったのです。信号はもちろん、レストランまでも休業だらけとなり、食事できるところを見つけるまで右往左往させられてしまいました。

 

 

そんなトラブルに遭遇しながらも撮影は2日間で終了。すぐさまアトランタ空港にもどり、帰路へ。街並みをじっくり見ることもなく「風のように去りぬ」状態で、アトランタを後にしました。

ちなみに「風と共に去りぬ」のクラーク・ゲーブルは、故淀川長治さんによると「歯槽膿漏」だったそうで、相手方のヴィヴィアンさんもさぞかし…。

 

マレーシア・ビントゥル出張 3月3日~7日

アメリカから帰国2週間後、今度は常夏の国マレーシアに行ってきました。

マレーシアの首都クアラルンプールから、飛行機で2時間、ボルネオ島のビントゥルという街に到着しました。そこには一面のパームヤシのプランテーションが広がり、そのヤシ畑に隣接して製油工場があります。撮影の目的は製油工程ではなく、そこから出た廃液をクリーンにする浄化装置、そして廃液から出るガスを燃やして発電するプラントです。

現地の気温は、30度。でもそんなに暑いと感じませんでした。仕事がなければ沖縄にいるような気分です。ただ残念なことに撮影場所が、見渡す限りパームヤシに囲まれた林ばかり、他には何もありません。

はじめて知ったのですが、マレーシアは、もともと林業の国。伐採した木材の跡地にパームヤシを植樹したそうで、確かにヤシの木が等間隔で植えられているのがわかります。

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どこまでも続くパームヤシの畑

ここでの撮影も2日間。最後の日は、クアラルンプールにもどって街並みの撮影。

パームヤシの風景から一変して近代的なビルをみて感動。特にマレーシアで有名なツインタワーの夜景は、白く輝いていてとても神秘的でした。

 

中国・上海(無錫) 3月16日~18日

マレーシア帰国10日後、中国の上海から車で2時間かかる無錫(むしゃく)に行ってきました。

そこにある建設機械(ユンボ)の製造工場を撮影しに行ったのですが、無錫の街並みを撮影しようと朝5時に起きてびっくり。視界はなんと約3m、これがかの有名な大気汚染か? 世界一面ガスで真っ白でした。現地の人いわく、天気のせいかもしれないが、北京から流れてくるPM2.5の影響もあるとのことでした。

撮影最後の日、上海の街並みも撮影しようと移動。社内では雨を切らしたことがないカメラマンとして定評のある私の上空には、またしても雨雲が広がり、なにやら怪しい予感。高層ビルの屋上からカメラを覗くと、これも真っ白。これは私が呼び込んだ雨のせいではなく、PM2.5の影響である、と社内では言い張っています。うーん、残念。

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この悪天候は私のせいではない!

それにしても1ヶ月の間に3カ国に出張とは、私にとって初めての経験でした。

昔は、海外撮影すると1週間から2週間ぐらいかけて行っていたので、現地の風情を楽しむ余裕がありましたが、最近はそういうわけにも行きません。航空運賃も安くなり、機材も小さくなって移動も楽になりましたが、世界が身近になるほど、ゆとりというものから遠ざかっていくような気がします。

 (by J.O.)