5月初頭、トラクタによる代かき作業と田植機作業を自動操舵技術を使って実演を行うということで取材をしてきました。

これからの農業は就業者の高齢化や労働人口の減少という問題を抱えていますが、そのような問題への対策として、農業の自動操舵技術の確立が喫緊の課題となっています。自然を相手にする農業だけに、その道のりは険しいものだと思われますが、私たちの生存を支える食糧生産の自動化、ロボット化は是非とも実現しなければならない技術の一つだと言えるでしょう。

現在位置がモニターでわかる

トラクタにセットされたGPS

農業の自動化を推し進める技術の一つに、GPSがあります。みなさん良くご存知の車のカーナビに使われている技術です。自動車の場合、自分がいまどこにいるかを知るのにそれほど正確な位置の把握は必要ありません。極端に言えば、誤差が1mくらいあったとしてもどこの道路を走っているのかさえ分かれば実用に大した影響を与えるものではないのです。

 

真直ぐに苗を植える

田植機の自動化で 苗はどれだけ真直ぐ植えられるのか

しかしトラクタや田植機となると、そのような大雑把な位置情報は致命的な欠陥となって、作物作りに大きな影響を及ぼすことになります。特に田植機の場合、数センチ単位で条間を揃えていかないと、その後の生育に大きな差が生じてしまいます。

植えつけた条が曲がっているということは、単に見た目が美しくないというだけでなく、肥料や薬剤の吸収が一様でなくなるため、稲の生育が不揃いになるというマイナス効果が大きいのです。

現在のGPS技術では、±2~3cmの誤差しかないそうですが、大気の状態や、太陽フレアの影響などでその誤差は大きく変化するそうです。宇宙からの目で、地上数センチの違いをどのように修正していくのか、それは二階から針に糸を通す(目薬より難しいでしょうね)よりさらに困難な技術かもしれません。

さらにトラクタや田植機の自動操舵によって全自動で耕うんや田植え作業が行えるようになれば、農業は新しい産業として生まれ変わることができるでしょう。そしてその土地に合った肥料の量や成分を把握していれば、従来と同じようなおいしい作物が収穫できるようになるかも知れません。熟練した農家の経験や勘に頼ってきた農業が、科学の力に支えられて、誰もが参入しやすい一大産業として成立する時代が訪れるかもしれません。

宇宙をも取り込んだ先端技術が、これからの農業を変えていくのを実感しました。

(by J.O.)