取材で訪れた福島県西白河郡のお米農家さん。お話おうかがいしてみると、「耕畜連携」を上手にされている方でした。

 水稲の総栽培面積10haの内、6haで飼料イネを栽培しているということで、かなり飼料作に力点を置いておられる模様。それというのも、隣町が酪畜の盛んな栃木県那須町という立地が大きく、車で15分のところに家畜飼料の大消費地があるという絶妙のロケーションで、しっかりとした販路を確保しているというのが、まずもって成功の前提になっているのだそうです。

 もちろん、売り先が近くにあるからといって、持っていけばそれだけ売れるというものではない訳で、きちんと良いもの、ここで言えば牛が喜ぶ餌を作らなければならないのは当然のこと。この農家さんも品質管理には非常に気を遣われている様子でした。

 普段、人が口にする食用の稲とは異なり、稲穂、即ち実の部分はどちらかと言えば添え物で、茎や葉の部分が主要部位となる飼料イネは、株元からごっそり刈り取って飼料に調製することもあり、通常の稲にも増して、雑草対策が肝要になるとのこと。酪農家の方は、牛の餌に雑草が混ざるのをとにかく嫌うのだそうです(大体において、牛の方はそれでも食べちゃうらしいですが、後々悪影響が出るそうで)。

 米価が低迷している現状とはいえ、飼料イネの単価はお米よりさらに安いというのが実情ですが、農家さんによると、「規模拡大を進めていく上では、安くても安定して収益が見込める部分、計算が立つ部分というのはとても重要」と話されます。経営の安定の上にさらなる規模拡大もあるということでしょうか。

堆肥散布 お米農家さんによる飼料イネの栽培・サイレージへの調製・販売に対して、酪畜農家さんの『連携』の一例は、写真の堆肥散布。自家の家畜糞尿を完熟堆肥に調製し、圃場まで運搬、散布の作業も酪畜農家さんが行います。トラックによるピストン輸送で堆肥を運び(これも物理的な距離が近いからこそですね)、飼料イネを栽培する圃場に10a当たり2t程撒いているそうです。

 先にも書いた通り、茎や葉まで刈り取って利用する飼料イネは、通常の稲わらすき込みによる土壌還元が得られないことから、この堆肥散布は至極有効な栄養分補給になります。酪畜農家さんにすれば、家畜糞尿の有効利用にもつながり、一石二鳥。お米農家と酪畜農家がスクラムを組んだ、しっかりとした循環システムが出来上がっているのでありました。

(by M.A.)