ダイナミックな火山活動を、間近に見ることができる大湧谷

研修旅行2日目。最初に向ったのは箱根にあるビュースポット、大湧谷(おおわくだに)です。約3,000年前、2回の火山活動を経てできた爆裂火口(火山の爆発的な噴火 によって生じた火口)の跡にあたる大湧谷は、今でも火山活動を間近に見ることができるスポットとして人気があります。

バスを降りると、鼻を刺す硫黄の匂いが。荒々しい岩山のあちこちから、硫化水素を含む白い噴煙が勢いよく噴出し、山が今なお活きていることが分かります。

富士箱根伊豆国立公園の特別保護地区に指定されている大湧谷一帯。大人気アニメ「エヴァンゲリオン」の劇中に出てくるシーンのモデルにもなった

 

標高が1,044 mある大湧谷。ロープウェイでは空から富士山を望むことができ、空気が澄む日はなんと東京スカイツリーまで見えるそう

標高が1,044 mある大湧谷。ロープウェイでは空から富士山を望むことができ、空気が澄む日はなんと東京スカイツリーまで見えるそう

大湧谷には火山活動の様子をつぶさに見ることのできる遊歩道があり、さっそくコースの最終地点「閻魔台」まで行くことに。コースは思ったより傾斜がきつく、息が切れます。

目の当りにする風景は草木が青々と生い茂る、いかにも山といったものではなく、さながら西部劇を彷彿とさせる荒野のよう。ゴツゴツとした大きな石が転がり、火山性のガスの影響か木は立ち枯れ、草の生えない赤茶けた地肌がむき出しになっています。ところどころ自然に湧きだした温泉が、あちこちで小さな池をつくり、独特な世界を作り上げています。

所要時間30分ほどで散策できるコース

散策できるコース「大湧谷自然研究路」は舗装されていて、気軽に歩くことができる。所要時間は30分ほど

 

白濁した温泉が流れ込み、池をつくっている。泉源池である大湧谷からは、温泉水が箱根各地に送られているそう

白濁した温泉が流れ込み、池をつくっている。泉源池である大湧谷からは、温泉水が箱根各地に送られているそう

15分ほどで閻魔台に到着。閻魔台には名物の「黒たまご」を売るお店、その名も「玉子茶屋」があります。側にはグツグツと煮えたぎる温泉池があり、「蒸し方」と呼ばれる人が毎日、ここで黒たまごをコツコツつくっています。

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「玉子スタンド」で富士山を眺めながら食べることができる黒たまごは、一袋5個入り。500円で購入できる

 

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黒々と輝く黒たまご

この黒たまご、普通の温泉ゆでたまごと違い、結構手間暇が掛かっています。まず約80℃の温泉で1時間かけてじっくりと茹でます。その後、蒸釜にたまごを移し、そこでまた15分ほど約100℃の温度で蒸して完成させます。さて、肝心の味はと言うと温泉効果のせいでしょうか、モチっとした白身に、しっとりとした黄身。旨味がギュッと凝縮されていて、塩をかけずとも美味。買い求める観光客は、後を絶ちません。

温泉池

玉子スタンドのすぐ横に、黒たまごをゆでる大きな温泉池がある

そうそう、この黒たまご、白身も黒いのかと言えばそうではありません。普通のたまごと同様、白色です。殻だけ黒い理由は、殻に鉄分が付着し硫化水素が反応して硫化鉄となるためだそうです。

ここでしか食べられない黒たまごですが、1個食べると7年寿命を伸ばすことができる、大変ありがたいたまごでもあります。これは平安時代弘法大師によってつくられたと言われている延命・子育ての「延命地蔵尊」にあやかり、黒たまごを食べると寿命が延びると言われるようになったことからきているそう。大湧谷を訪れた際には、ぜひ食べていただきたいものです。

空飛ぶ黒たまご。出来た黒たまごは専用のロープウェイに乗せられ、下にある売店でも売られる

空飛ぶ黒たまご。できた黒たまごは専用のロープウェイに乗せられ、下にある売店でも売られる

 

富士山を望みながらレイクレジャーが楽しめる芦ノ湖

さて、大湧谷を後にして次に向ったのは芦ノ湖です。芦ノ湖は箱根火山の中にあるカルデラ湖(火山活動によってできた大きな窪地)で、湖畔には成川美術館や箱根園水族館、箱根神社など数多くの観光スポットが点在し、それぞれロープウェイや遊覧船で結ばれています。美しい湖畔を眺めることができるホテルや、のんびり寛ぐことのできる温泉宿など、芦ノ湖の自然を満喫できる魅力ある宿泊施設も多く、箱根観光のハイライトです。

南北7Km、周囲20Kmの芦ノ湖。クルージングやスワンボード、釣りなど様々なレイクレジャーが楽しめる

南北7Km、周囲20Kmの芦ノ湖。クルージングやスワンボード、釣りなど様々なレイクレジャーが楽しめる

また、芦ノ湖は箱根駅伝の往路ゴール、復路スタート地点がある場所としても有名で、開催日当日には、ランナーたちを一目見ようとたくさんのギャラリーで賑わうそうです。

見応えがある芦ノ湖ですが、私たちはと言うと遊覧船で30分ほどのクルージングを楽しみました。乗船したのは、700人が乗船できる「はこね丸」。湖尻港を出発し、箱根関所がある箱根関所跡港へ向います。窓が大きく取られた船内は明るく、広々としていて遠くの景色が良く見えます。

周囲がぐるりと見渡せる展望デッキで、心地よい湖の風にあたりながら、のんびりクルージング

周囲がぐるりと見渡せる展望デッキもあり、心地よい湖の風にあたりながら、のんびりクルージングが楽しめる

 

大きな窓から操舵室にいるキャプテンの舵さばきが間近で見られる

さて、この日の天気ですが大湧谷の写真でも分かるように、出港するほんの前まで雨が降って良くありませんでしたが、航海中だんだんと陽が差しはじめ、雲の切れ間から青空が顔を覗かせるまでに回復しました。「もしかしてこれは富士山が期待できるかも」と、カメラ片手に展望デッキにダッシュ。しかし、箱根の山々はよく見えるものの、肝心の富士山は見えず。(今日は機嫌が悪いのかどうだか)

本来なら真正面に富士山が見えるはずだが・・・

本来なら真正面に富士山が見えるはずだが・・・

 

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箱根の美しい山々。これからの季節は新緑が鮮やかに

しばらく展望デッキにいると、豪華絢爛な船と行き交いました。中世ヨーロッパの帆船を模した海賊船で、悠々と風を切って進む姿はフォトジェニックです。

豪華な装飾が施された海賊船。冒険心をくすぐる船は、子供連れにぴったり

豪華な装飾が施された海賊船「ロワイヤルⅡ号」。冒険心をくすぐる船は子供連れにぴったり

そうこうしているうちに、あっという間に目的地の箱根関所跡港へ到着。降り立った目の前には、江戸時代にタイムスリップしたかのようなレトロな建物「箱根関所」が堂々と佇んでいました。

芦ノ湖の南に位置する箱根関所は、港のすぐ側にある

芦ノ湖の南に位置する箱根関所は、港のすぐそばにある

 

現代に甦った江戸時代の交通の要所、箱根関所

江戸時代の初期1619年に江戸幕府により設置された箱根関所は、全国50数ヵ所の関所の中でも大きな規模を誇り、上方と江戸とを結ぶ最も重要な街道であった東海道を監視するために設けられた関門です。

1999年から2001年の3年間に渡って発掘調査が行われ、調査の分析結果をもとに2007年、当時の姿をそのままに復元したそうです。関所内では史実に基づいて展示されたオブジェや調度品の数々が展示され、また、音声ガイダンスもあって江戸時代の関所の様子が疑似体験できます。

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江戸の防備と治安のために設けられた箱根関所は、江戸から関西方面に行く女性の旅人「出女」に特に厳しく、念入りに取り調べが行われていたそう

 

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日中、関所役人がこの部屋に詰めて関所を通る旅人を取り調べた「面番所 」

なかでも街道や芦ノ湖を見張っていた遠見番所から見る景色は、圧巻の一言。約400年前、同じようにこの風景を江戸時代の役人や旅人も見ていたのでしょうね。

遠見番所から眺める芦ノ湖は絶景のビュースポット。ここに辿り着くためには約80段の急な階段を上る必要がある

遠見番所から眺める芦ノ湖は絶景のビュースポット。ここに辿り着くためには約80段の急な階段を上る必要がある

さてこの2日間、富士山にまつわる観光スポットを巡ってきましたが、ここ箱根関所をもって終了。小田原駅から新幹線で帰ります。箱根関所を後にバスに乗り込んでしばらく芦ノ湖畔をドライブしていると、「あれ、富士山じゃない?」と声が上がりました。じっと目を凝らすと、ほんのわずかですが頂上付近が見えているではありませんか!1日目に引き続き、ラッキーです。

旅行中、終始富士山に一喜一憂した私たちですが、アテンドしてくれたバスガイドさんが話すには、3日間晴れていたにも関わらず、滞在中一度も富士山を見ることができなかった方もいるそうで、天候不順の中、2回も富士山を見ることができた私たちは幸運だったのかもしれません。何年後かに今回の旅行を振り返った時、このことが印象深い出来事として話のタネになり、想い出話に花が咲くのでしょう。今回も時間が足りないぐらい、楽しい旅行となりました。